調査・研究・出版
 

英国コッツウォルズ地方を旅して

横浜都心部における馬車道の位置
田園風景の中に佇むマナーハウス(Winchcombe 郊外)

   英国人の心の故郷と言われるコッツウォルズ地方を旅して来ました。コッツウォルズとはロンドンから西へ200キロメートル程の位置に広がる丘陵地帯で、大学町の「オックスフォード」、町自体が世界遺産となった「バース」、シェイクスピアの生誕地である「ストラットフォード・アポン・エイボン」という三つの街を直線で結んだ三角形の中にあるエリアです。そこには絵画のような田園風景が広がり、英国人の憧れる自然の中でのカントリーライフが送れる理想郷と言われるような魅力溢れる場所です。ウィリアム・モリスはこの地方を「地上の楽園」と呼び、ケルムスコットに終の棲家となる屋敷を構えました。

「馬車道マルシェ」人力車や馬車に試乗できる。 現在の馬車道(旧横浜正金銀行/現神奈川県立歴史博物館前)
絵画のように美しい村と言われる Castle Combe の街並み(写真左右共)

   コッツウォルズには美しいピクチャレスクな村々が点在していますが、それらは地場産のライムストーンで建てられ、今では風雪を感じさせる味わい深いハニーカラー(蜂蜜色)の家並みとなっています。コッツウォルズ地方は歴史的には13〜14世紀に羊毛産業の集散地として栄えた地域ですが、その後は産業革命の波に取り残され、歴史的な街並みと景観が残されることになったそうです。今では厳しい景観条例とナショナル・トラストなどの保存活動も効果を上げて、広い範囲にわたる美しい景観の維持保存が行われています。

「馬車道マルシェ」人力車や馬車に試乗できる。 現在の馬車道(旧横浜正金銀行/現神奈川県立歴史博物館前)
写真左:マナーハウスのエントランスコート(Guiting Power)
写真右:旅行中唯一見つけた新築の家。伝統的なライムストーンによる石積みで建てられている(Guiting Power)

   日本でもようやく景観についての議論が盛んになってきましたが、家づくりに関する社会的制度の変革や景観や歴史的建物の保存運動だけでなく、家を所有しあるいは使用する市民レベルでの意識の改革が求められるのではないかと実感した旅でした。


  写真撮影は全て米澤正己によるものです。無断で複写・転載することを禁じます。
この原稿はJIA日本建築家協会関東甲信越支部住宅部会30周年記念冊子に掲載されたものです。



 
  PDSでは、本場英国から地場産の良質なライムストーンや各種建材を輸入している業者の協力を得て、本格的な英国建材と王立英国建築家協会会員建築家のデザインによる住宅建築のご提案が可能です。伝統的な英国建築の意匠を活かして、日本国内の建築基準法に適合した素敵な住まいを建ててみませんか!