■AIA大会において決議されたこと
21世紀最初のAIA大会は2000年の5月4日から6日までアメリカ建国の都フィラデルフィアにて開催された。地元フィラデルフィア支部も、コミュニティの再生に高い評価を得て企画した大会だけのことはあり、「新しい世紀、新しいビジョン、住み良い社会を目指して」という大会テーマの下に、約2万人の参加者があり、AIA大会としては史上最大規模の大会となった。今年も継続教育の対象となる200近いセミナーや各種ツアーが大会プログラムとして用意され、650社以上が参加したEXPOも併催され盛況を呈したが、本大会においては大会テーマを受けて次の5つの決議が採択された。
1.フィラデルフィアの建築&デザイン・チャーター・ハイスクール設立を評価すること。
2.AIAの政策の一部として、住み良いコミュニティづくりのための基本的見解を採用すること。
3.サステイナブル・デザインを設計活動へ統合すること。
4.電子的なウエブ上のAIA配布書類の扱いとそれによる収益の配分に関すること。
5.電子情報に関する収益の配分に関すること。
アメリカにおける教育問題の大きな進展に関しては、日本においてもチャーター・スクールの開設などが紹介されているが、AIAも地元支部がコミュニティにおいてリーダーシップを発揮して、NPOとしての学校の設立運営にかかわろうとしていることは興味深い。住み良いコミュニティ(Livable Communities)に関する決議とサステイナブル・デザインに関する決議はお互いに深く関連する事項であるが、ここではサステイナブル・デザインに関する決議文を紹介したい。
決議の目的は、「AIA会員建築家にとってサステイナブル・デザインとは質の高いデザインと責任ある設計行為の基礎となるものであることを認識して、サステイナブル・デザインをAIAの定める設計活動とその手順の中に統合すること」とある。そこに至る認識として、次の5つの事項が挙げられている。
1.環境の保全と保護は一般大衆の健康と安全と福祉にとって欠くことのできないものである。
2.アメリカ合衆国における経済的繁栄と人口増加の相乗効果は自然資源に対して絶えず増大しつづけている圧力をかけている。
3.最も広い視点から見ると、サステイナビリティとは社会がそれに依存する要となる資源の消耗や過剰により衰退へと追いやられることなしに、未来に向かって正常に機能しつづける能力を言う。
4.サステイナブル・デザインとは、自然生態系や動植物の生息地保護、エネルギー資源・水資源・原料資源の保存、廃棄物や汚染の減少、再生可能なエネルギー資源の利用促進、リサイクル率の向上と建設工事や建物の取り壊しから出る廃棄物の削減、室内環境の質を高めることの推進など、多くの分野を統合するデザインに対するアプローチである。
5.AIAは、建物設計や建築物の配置計画などに関連する環境デザインやエネルギー保存、そして自然資源の保護などにおいて我が国の執事役を果たしてきた。
AIAがとるべき行動としては、次の2点を決議した。
1.AIAはその会員の設計図書(AIAによる発注者と建築家間の設計契約図書や主要な特記仕様書の体系)にサステイナブル・デザインを組み込むことを支持する。
2.AIAは、統合的なデザインプロセス、生産性の向上、そしてライフサイクルコストの低減を含むサステイナブル・デザインから得られる利益を定量化すること、また高機能な建物や次世代型サステイナブル・デザインの解決法を創造するために設計技術や教育のためのリソースを開発すること、そして建築資材や材料に関連する生涯にわたる環境影響に関する情報のナレッジベースを進展させること、さらにAIAのデザイン表彰制度におけるサステイナブル・デザインへの配慮を行なうことなどを通して、自然資本の管理や自然資源の保全と保護につながる発案を支持する。
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